「顧客満足度を上げるために何からしたら良いのか分からない。適切な投資先が分からない」という方は、ポートフォリオ分析がおすすめです。
ポートフォリオ分析は、ある項目が総合満足度に与える影響を可視化できる、マーケティングにおいて欠かせない分析方法です。
本記事では、ポートフォリオ分析の考え方や方法、活用事例をご紹介します。
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ポートフォリオ分析とは
ポートフォリオ分析とは、マーケティングで使われる分析手法です。
縦軸に重要度、横軸に満足度を示す二次元の表を作成し、各項目をマッピングすることで事業の重要項目や注力すべき点が見えてきます。
二次元の表は、以下の表のように4つのエリアに分類して考えるのが基本です。
重点改善項目 | 重点維持項目 |
改善項目 | 維持項目 |
(右に行くほど顧客満足度が高く、上に行くほど重要度が高い)
顧客の声を表にまとめて可視化することで、早急に対応すべき重要項目、注力する必要のない項目などの選定をできるのがメリットです。
投資の配分決定や経営判断にも活用されます。
また、ポートフォリオ分析は“Customer Satisfaction(顧客満足度)”を略してCS分析と呼ばれる場合もあります。
尚、ポートフォリオ分析の元となる考え方にPPM分析があります。
PPMは“Product Portfolio Management”(プロダクトポートフォリオマネジメント)の略です。
PPM分析は、市場成長率と市場専有率を二次元表で表し、4つのエリアに分けて分析します。
花形(維持すべき項目) | 市場成長率:高い市場占有率:高い | 市場での成長率が高く市場占有率も高い、一方で競合も多いので積極投資が必要。 |
問題児(育成すべき項目) | 市場成長率:高い市場占有率:低い | 市場成長率は高いが市場占有率は低い。活動次第で花形または金のなる木になるが、競争は激しい。 |
金のなる木(安定した利益)) | 市場成長率:低い市場占有率:高い | 市場の成長率は低いものの市場占有率が高いので安定した利益を期待できる領域。 |
負け犬(撤退すべき項目) | 市場成長率:低い市場占有率:低い | 市場成長率、市場占有率共に低く、将来性が見込めない、会社の赤字に繋がる可能性のある領域。 |
ポートフォリオ分析は、PPM分析をマーケティングのために改変した分析法と考えてください。
ポートフォリオ分析に関する用語解説
ポートフォリオ分析の際によく使われる用語を分かりやすく説明します。
事業ポートフォリオ分析
事業ポートフォリオとは、企業の事業を一覧にしたものを指します。
事業を一覧にすることで以下のメリットがあります。
- 事業ごとの収益が一目でわかる
- 事業の安全性、成長性が分かる
全ての事業を一目で確認することで、今後力を入れるべき事業や経営資源の活用方法の決定に役立ちます。
相関関係/相関係数
ある2つのデータには関係があるのか、関係ないのかを表したものが相関係数です。
相関関係/相関係数が強い場合、1つのデータを改善すればもう一方のデータも動きます。
相関係数は次の数式で求められます。
(aとbの相関係数)=(aとbの共分散)/(aの標準偏差)×(bの標準偏差)
※共分散|2つのデータの間にどの程度相関があるのかを表すもの
※標準偏差|データのばらつき。データが平均値に対してどれくらいばらつきがあるかを表す
エクセルでは〈CORREL関数〉を使うと簡単に相関係数が求められます。
相関係数が1に近いほど正の相関がある、0に近いほど相関がないと考えられます。
ポートフォリオ分析における4項目の意味や考え方
ポートフォリオ分析では二次元の表において縦軸を満足度、横軸を重要度とし、以下の4つのエリアに分けて考えます。
それぞれの言葉の意味や重要度について解説します。
重要維持項目
満足度、重要度共に高いエリアを重要維持項目と呼びます。
顧客から支持を得ているポイントであり、サービスの強みであると考えられます。
引き続き積極的に維持することが求められます。
維持項目
維持項目は、顧客満足度は高いが重要度はそれほど高くないものです。
現状を維持する必要はあるものの、重要度が高くないことから水準を上げることも急ぎません。
マイナスにならない程度に維持したい項目と考えてください。
重要改善項目
重要度が高いのに、満足度が低いエリアが重要改善項目です。
顧客からの需要はあるのに、満足はしていないということですので、早急に改善が必要です。
4つのエリアの中で最も改善を急ぐ項目と考えてください。
改善項目
改善項目は、重要度も満足度も低いものです。
重要度は高くないので、積極的な投資をして満足度を改善することは求められません。
改善するのが難しい場合、撤退するのも方法の1つです。
ポートフォリオ分析のやり方
実際にポートフォリオ分析を行う方法をご紹介します。
エクセルの関数を使えば、比較的簡単に行えるのでぜひ試して、活用してください。
1:アンケートの実施
ポートフォリオ分析の第一歩として、対象の製品やサービスに関してアンケート調査を行います。
アンケートを行う際の注意点は2つあります。
まずアンケートを行う際は「全体の満足度」「特定のサービスや製品の満足度」の2項目を収集してください。
また、2つのアンケートの尺度は統一する必要があります。5〜10段階で回答してもらうのがおすすめです。
分析を年齢別、男女別で集計したい場合、アンケートを取る際に一緒に回答してもらうのを忘れないようにしてください。
2:エクセルで集計を行い、満足度と重要度を算出
アンケートを実施したら、次は集計を行います。
アンケートの5〜10段階の回答を「満足」「普通」「不満足」の3つに分けて、「満足/合計数」で満足度を算出します。
重要度は満足度と各項目の相関係数で算出します。必要に応じて年代や性別ごとに集計してください。
エクセルで相関係数を求める場合「=CORREL(満足度の行、重要度の行)」で求められます。
3:グラフの作成
算出した満足度と重要度を二次元表に落とし込みます。
一般的に縦軸が重要度、横軸が満足度で表します。
4:改善項目の洗い出し
出来上がった表を見て、改善項目を洗い出します。
改善が急がれるのはグラフの左上「重要改善項目」です。
ポートフォリオ分析の活用事例
ポートフォリオ分析は、さまざまな場面で活用されます。
ここでは、スーパーマーケットでのポートフォリオ分析活用例を紹介します。
株式会社クロス・マーケティング社が行った、スーパーマーケットの顧客満足度のポートフォリオ分析では、「惣菜が美味しい」「価格が手頃」など9つの項目の満足度と総合的な満足度の調査を顧客に対して行いました。
顧客は「満足〜不満」の5段階で回答します。
各項目の回答で「満足」「やや満足」と答えた人の割合をそれぞれ算出した結果「惣菜が美味しい」の項目の満足度が55.0%で、相関係数が約0.6となりました。
相関係数が1に近いほど相関が強いので、このスーパーマーケットの「惣菜が美味しい」ことは、顧客が満足する要因であることが分かります。
一方で「品切れが少ない」の項目の満足度は15.0%、相関係数は約0.6でした。
つまり、顧客が「品切れが少ない」に関して不満足(=品切れが多い)であり、スーパーマーケットの総合的な満足度にも大きく関わっていると考えられます。
そのため、このスーパーマーケットは「品切れ」の問題を早急に解決する必要がありそうです。
このようにポートフォリオ分析は、総合的な満足度に深く影響する要因を知る手がかりになり「〇〇から改善したら良い」というヒントが見えて来るのがメリットです。
ポートフォリオ分析によって適切な投資先を見極めよう
ポートフォリオ分析は、顧客が真に求めていること、第一に改善すべき点が見えてくる便利な分析方法で、マーケティングにおいて欠かせないツールです。
一見難しそうに見えますが、エクセルを使えば簡単に行えます。
「顧客満足度を上げるために何からしたら良いのか分からない」いう方は、ポートフォリオ分析を行って、適切な投資先を見極めましょう。