UGCとは「ユーザー生成コンテンツ」のことです。
UGCは、マーケティングに携わっている方なら、ぜひ押さえておきたい強力なコンテンツ形態といえます。
この記事では、UGCの言葉の意味を確認したうえで、なぜ重要なのか解説します。施策のヒントもお伝えしますので、参考にしていただければ幸いです。
UGC(ユーザー生成コンテンツ)とは?基本の知識
まずは基本の知識から見ていきましょう。
企業・ブランド以外の人々が作成するコンテンツを指す
UGCは「User-Generated Content」の略語で、日本語ではユーザー生成コンテンツと訳されます。
企業やブランドに関わるコンテンツのうち、一般の人たち(消費者、顧客、ユーザー)が作り、おもにネット上で公開されるコンテンツ全般をUGCと呼びます。
UGCの種類
UGCの種類は多岐にわたります。例を挙げましょう。
- SNSの投稿
例:Twitter、Instagram、TikTok、Facebook - 動画・ライブ配信
例:YouTube、ニコニコ動画、ツイキャス - レビュー
例:Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピング、トリップアドバイザー、@cosme、食べログ - ブログ他
例:note、Amebaブログ、はてなブログ、個人ホームページ
PR投稿は含まない(オーガニック投稿のみ)
注意点として、UGCの概念が指すのは、オーガニック投稿(広告目的ではない自然な投稿)のみです。
たとえば、インスタグラマーやユーチューバーなどのインフルエンサーに報酬を支払い、PR案件としてコンテンツを作成してもらった場合、それはUGCと呼びません。
UGCは、報酬やスポンサー契約なしに、ユーザーが自発的に作成したコンテンツを指す言葉です。
UGCの作り手
UGCの作り手は具体的に誰かといえば、3パターンに大別できます。
- 一般消費者(ノンユーザー)
自社ブランドの購入者ではない一般の人たち。潜在顧客や見込顧客を含む。 - 顧客・ユーザー
自社ブランドの購入者あるいは(非課金を含む)サービスの利用者。 - ロイヤルカスタマー
自社ブランドの愛用者・支持者・ファン。
ここまでの基礎知識を踏まえつつ、続けて「なぜUGCが重要なのか?」を見ていきましょう。
UGC(ユーザー生成コンテンツ)が重要な3つの理由
UGCがマーケティングにおいて重要な理由は、大きく分けて3つあります。
・カスタマージャーニーに頻出のタッチポイント
・ブランドの権威性が表出する場
・ロイヤルカスタマーの影響力の最大化
それぞれ解説します。
1. カスタマージャーニーに頻出のタッチポイント
1つめのポイントは、「カスタマージャーニーに頻出のタッチポイント」です。
現代の消費者行動では、カスタマージャーニー(顧客のブランド体験を旅になぞらえた概念)の、ほぼすべてのステージでUGCが使われるといっても過言ではありません。
顧客とブランドのタッチポイント(顧客接点)の多くが、UGCになっているのです。
たとえば、購入検討の段階では、Twitterでブランド名を検索し、評判を確認します。
購入直後には、使い方を調べるために、YouTube動画を見るかもしれません。
気に入って愛用するようになると、Instagramに写真を投稿して、友人にシェアしたくなります。
ブランド制作のコンテンツを完璧に仕上げたとしても、カスタマージャーニーがその範疇に収まることはありません。
むしろ、UGCの影響力が大きくなっているため、
「UGCをいかに好ましい状態にマネジメントするか?」
が、マーケティング成果を左右しています。
2. ブランドの権威性が表出する場
2つめのポイントは「ブランドの権威性が表出する場」です。
かつては多くの企業が、権威性を高める目的で、都内の一等地に店舗を構えたり、一流の百貨店と取引したり、有名雑誌にタイアップ記事を出稿したりしていました。
現代では、権威性(社会的信用や優越的な価値)は、UGCによって可視化されています。
たとえば、ある企業が新規取引先の評判をリサーチしたいと思ったら、UGCを確認すればよいのです。
UGCは、ビジネス上のターゲット顧客のみならず、企業間取引にも影響を及ぼします。
3. ロイヤルカスタマーの影響力の最大化
3つめのポイントは「ロイヤルカスタマーの影響力の最大化」です。
近年、「ロイヤルティマーケティング」と呼ばれる、既存顧客を重視する戦略に注目が集まっています。
新規顧客の獲得コストが高騰するなか、既存顧客の収益性に着目し、LTV(ライフタイムバリュー:顧客生涯価値)の向上を目指す企業が増えているのです。
しかし、ロイヤルカスタマーの真の価値は、企業に直接もたらされるLTVの利益だけではありません。
ロイヤルカスタマーが、レビュー・口コミ・推奨などの発信によって、市場に与える影響は絶大です。
新規顧客の獲得から既存顧客の維持拡大まで、ロイヤルカスタマーの間接効果を最大化するために、UGCが重要となります。
UGC(ユーザー生成コンテンツ)施策を成果につなげるヒント
UGCの施策を成果につなげるためには、どんな点を意識すべきでしょうか。4つのヒントをご紹介します。
- 偽物を排除する
- きっかけを作る
- コミュニケーションをとる
- EGCへ取り組む
1. 偽物を排除する
1つめは「偽物を排除する」です。
カスタマージャーニーのあらゆるステージで、顧客がUGCと接触するのは、
「UGCなら、真実が語られる」
と信じているからです。
最も避けるべきことは、この「信頼」を裏切ることです。
ステルスマーケティングはもってのほかですが、PR案件かオーガニック投稿か紛らわしいグレーゾーンを狙う、といった行動も避けるべきといえます。
なぜなら、ユーザーは容易に“偽物”を嗅ぎつけ、それを遠ざけるためです。
ビジネス成果が期待できないどころか、ブランドに深刻なダメージを与えるリスクがあります。
2. きっかけを作る
2つめは「きっかけを作る」です。
UGCは、ユーザーの自由意志によって、自発的に作られるべきであることは、大前提です。
しかし、企業・ブランドにできることは何もないのか?といえば、そんなことはありません。「きっかけづくり」ができます。
特定のハッシュタグや、投稿テーマの提示、SNSコンテストなどの機会は、UGCの促進に不可欠な要素です。
たとえば、UGCキャンペーンのなかでも世界的に知られているのが、コカ・コーラの「Share a Coke」です。
名前入りの限定ボトルの発売とともに、そのブランド体験を「#ShareACoke」のハッシュタグで投稿するよう促しました。
参考:Instagram「#shareacoke」のリンク
2011年にオーストラリアで始まったこのキャンペーンは、バリエーションを替えながら、世界中の国々で展開されています。*1
3. コミュニケーションをとる
3つめは「コミュニケーションをとる」です。
顧客、とくに熱心な支持者・愛用者であるロイヤルカスタマーにとって、UGCにブランドからのコメントやリポストを受け取ることは、とてもうれしい瞬間です。
UGCを通じたコミュニケーションは、それ自体が優れたUX(ユーザーエクスペリエンス、顧客体験)となります。
ブランドと顧客の関係を深化させ、強固なつながりを形成するために有益です。
あるユーザーとの会話がほかのユーザーの琴線に触れ、バイラル(爆発的な拡散)のきっかけとなることもあります。
“不特定多数のフォロワー”として一括りに扱うのではなく、UGCに感謝したり、質問があれば答えたり、1対1のコミュニケーションを積み重ねていきましょう。
4. EGCへ取り組む
4つめは「EGCへ取り組む」です。
EGC(Employee-Generated Content)とは「従業員生成コンテンツ」のことで、“UGCの社員版”と捉えてください。
EGCは上級者向けではあるのですが、ブランドの背景にあるストーリーや、商品・サービス提供の舞台裏などを、従来の広告とは異なる形で伝えるために、高いポテンシャルを秘めています。
同時に、前述の「きっかけづくり」や「コミュニケーション」の観点からも、相乗効果が期待できます。
SNS上では、人間同士のやり取りがよい刺激となり、アウトプットが進むことがあるためです。
体温のない企業の公式アカウントより、体温あるひとりの社員のアカウントのほうが、ユーザーの心を動かすことも多いでしょう。
ただし注意点として、同じことが負の方向にも当てはまります。EGCが炎上のきっかけとなってしまうことがあるのです。
それが先ほど上級者向けとお伝えした理由です。UGCやSNS運用に関する知見が十分に得られ、さらなる高みを目指すタイミングで、検討してみてください。
さいごに
本記事では「UGC」をテーマにお届けしました。
最近は「広告効果が低下した」「広告を信頼しないユーザーの割合が増えた」といったデータを目にすることが多いのですが、実際に自分自身を省みても納得感があります。
企業の商品説明よりも、UGCに触れている時間のほうが圧倒的に長くなっています。
UGCの重要性は、今後も増していくと考えられます。あらためて取り組みを見直し、成果をあげるきっかけとしていただければと思います。
出所) Coca-Cola Australia「What was the ‘Share a Coke’ campaign? 」
https://www.coca-colacompany.com/au/faqs/what-was-the-share-a-coke-campaign
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※画像出典:文中画像は筆者作成
三島つむぎ
ベンチャー企業でマーケティングや組織づくりに従事。商品開発やブランド立ち上げなどの経験を活かしてライターとしても活動中。