誰とでも5人を介せば繋がれる。
あなたの知っている有名人や、あの著名な作家ともたった5人で繋がることのできる世界。
そんな世界があったらどうしますか?
実は、私たちはもうそんな世界にいるのかもしれません。
本記事では、マーケティング担当者であれば知っておきたい「6次の隔たり」という概念を説明します。
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統計学?6次の隔たりとは?
6次の隔たりとは、人物も物事も、あらゆるものが6ステップ以内に繋がるという考え方です。
この考え方に則れば、広く見える世界であっても、実は小さな繋がりによって成り立っているといえます。
語源由来辞典によると、「人間」という漢字の語源は仏教のサンスクリット語からくるようで、「世の中」「世間」「人の世」を元々意味していました。
その後、江戸時代以降に現代の「人」そのものを表す言葉になりました。
今まで『人と人との間』『人と人と間で生きる』などの「人と人との関係性」に注目をする本が数多く出版されてきました。
6次の隔たりは、まさに人間が各々の関係性の上に成り立っていることを示した仮説ともいえます。
6次の隔たりの提唱者「カリンティ・フリジュシュ」の『鎖』
6次の隔たりの仮説は、ハンガリーの文学者「カリンティ・フリジュシュ」の文学作品『鎖』から生まれました。
「今日、地球上の人々はかつてない程に接近しあっている」から始まる一小節のなかで、カリンティは以下の内容を記載しました。
地球上に存在する15億人の中のひとりの名前を行ってご覧なさい。たった5人の知人の輪を通して、名前の上がった人物まで鎖を通して見せよう。
当時は大きな話題にまでは広がりませんでしたが、1990年代に劇作家のジョン・グエアの戯曲『Six Degrees of Separation』の公開を経て、「6次の隔たり」として注目を集めることになります。
6次の隔たりの実験
「人々はたった5人を介せば誰でも繋がることができる」とフリジュシュが執筆してから数十年後、この仮説はハーバード大学の教授「スタンレー・ミルグラム」によって検証されました。
その後、6次の隔たりは関心を集め、今までに多くの検証実験がなされました。
ここでは、実験のうちの代表例を2つ取り上げます。
- スタンレー・ミルグラム教授によるスモールワールド実験
- イギリスBBCの実験
スタンレー・ミルグラム教授によるスモールワールド実験
ハーバード大学教授「スタンレー・ミルグラム」は以下の実験を行いました。
<実験内容>
無作為に協力者を募り、手紙を予め決めておいた人物まで届ける(この人物は、直接知らない人物である)。
160通の手紙を用意し、無作為に抽出された人物に手紙を渡し、何通が目的の人物まで届くか検証する。
この結果解ったのは、42通が実際に届き、おおよそ5.83ステップで目的地に辿り着いたということです。
この実験から、5人の媒介者がいれば目的の人物までたどり着く理論の現実性が証明され、知り合いを芋づる式に辿れば比較的簡単に目的地までたどり着くという「スモール・ワールド現象」提唱の契機となりました。
イギリスBBCの実験
イギリスBBCも「6次の隔たり」の仮説を検証するための実験を行いました。
<実験内容>
世界中から無作為に抽出した40人に対して小包を渡す。
ボストンに住むマーク・ヴイダルという人物に届けて欲しいと依頼し実験開始。
40個のうち37個は途中で人々の関心から外れてしまいましたが、3個は目的地まで到着。
うち2つは5人の媒介者で届き、1つは6人の媒介者で届くという快挙を成し遂げました。
6次の隔たりの証明方法・計算例
6次の隔たりを検証する実験は多く行われていますが、実験から導き出される値はおおよそ6〜7となります。
なぜそうなるのか、計算式を使って考えてみましょう。
例えば、日本人の場合で考えてみると、私たちの友達の平均人数は「専門・大学生の場合」で44.8人です。
仮に人々の友人が重複せずに45人の友人を持っている場合、5人を介した際の友人の組み合わせは83億通りと計算できます。
計算式:45✖︎45✖︎45✖︎45✖︎45✖︎45=83億通り
2022年に世界人口は80億人に達する見込みですが、これは先ほど求めた解=83億未満であるため、計算上は6次の隔たりは正しいと証明できます。
※実際は友人の重複を考えますが、ここでは簡略化しています。
SNSにより6次の隔たりは4.5次の隔たりまで縮まった
6次の隔たりの計算式は、友人数の六乗で示されます。
したがって、友人数が増加するほど、6次で到達できる人物の数は増加します。
例えば仮に1人あたり100人の友人がいた場合、100億人に到達するためには、100✖︎100✖︎100✖︎100✖︎100のたった5次の繋がりだけしかいらないということです。
ところで、2000年以降に友人数を増加させたサービスがあります。それがSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)です。
FacebookやTwitter、InstagramなどのSNSを使うと、気軽にWEB上であっても「友達申請」をすることが可能になりました。
実際、Facebook(現Meta社)は2016年に特定の2者間の距離を計る実験を行いましたが、かつて6次の繋がりと呼ばれていた2者間の距離は、Facebook上では既に4.5次の隔たりまで縮小していたということです。
SNSの到来が、6次の隔たりをさらに低い次元まで押し下げたとわかる実験結果でしょう。
参考記事:Anatomy of Facebook
6次の隔たりの活用例「エルデシュ数」
6次の隔たりの活用例として有名なのが「エルデシュ数」です。
「ポール・エルデュシュ」はハンガリー出身の有名な数学者で、過去500名をこえる共著者と論文を出しました。つまり論文の共著者が多く存在するということです。
エルデシュ数とは、そんな「ポール・エルデュシュ」にたどり着くまでに媒介した、論文の共著者数を示しています。
はじめはエルデュシュの友人が冗談で作ったものでしたが、現在ではひとつのコミュニティとして機能するほど、愛されている指標です。
エルデュシュ数は下記のサイトから調べられます。
こんなところにも?6次の隔たりはバラエティでも親しみがある
6次の隔たり実験は海外で提唱され、国外で検証されているとお考えの方は多いかもしれません。
しかし、面白い企画として日本でも取り上げられています。
- 林先生の初耳学「フワちゃんが6次の隔たり理論を実地検証!
- 水曜日のダウンタウン「数珠つなぎ6人で誰の電話番号にでもたどり着ける説」
林先生の初耳学「フワちゃんが6次の隔たり理論を実地検証!」
バラエティに頻出のフワちゃんが、日本の饅頭屋さんからアメリカの人気歌手「アリアナ・グランデ」へたどり着くことをゴールとした企画が、林先生の初耳学で放映されました。
「八王子の饅頭屋さん」というアリアナとはかなり遠い人から始まった本企画は、1人目から7人目にして、グラミー賞4度受賞のアーティスト「マイケル・ブーブレ」に到達。
アリアナ・グランデと共演したこともあるマイケル・ブーブレでしたが、残念ながら新型コロナウイルス感染症が猛威を奮っていたこともあり、最終目標には到達できず。
それでも「落ちつたら皆でご飯に行こう」と誘われるなど、6次の隔たりの有効性を感じられる企画となりました。
水曜日のダウンタウン「数珠つなぎ6人で誰の電話番号にでもたどり着ける説」
大人気番組「水曜日のダウンタウン」でも6次の隔たりは検証されています。
番組では最終的な到達点を「松本人志氏の携帯番号」とし、検証を開始。
検証は3回行われましたが、下記の手順にて最終到達点へ辿り着きました。
- アパレル勤務の男性→スタイリスト→別のスタイリスト→松本氏マネージャー→松本氏
- 中学校講師→舞台俳優→X-GUN・さがね正裕→三又又三→松本氏
- 美容師→映像編集者→映像編集者→フジテレビプロデューサー→松本氏
当仮説では「4次」の隔たりが証明されることとなり、人によっては6次も必要ないことがわかりました。
問題点:SNSの広がりは「親友」の数を増やしたわけではない
SNSにより友人との繋がり、匿名性を持ったコミュニティが活性化する一方で、親友の数は増えてきたわけではないことに注意しておきましょう。
SNSにはFacebook、LinkedInなど本名で始めるのが一般的なものもあれば、Twitter、インスタなど匿名性の高いアカウントが数多くあるものも存在します。
しかし、匿名性の高いアカウントの「友人数」がどれほど増加しても、親友と呼べる友人が増えたわけではありません。
SNSは友人の量を増やすことには成功しても、質をあげたわけではないということです。
SNSが広まり、世界が小さくなったように見えても、自分と心の距離が近い人の数は決して増えたわけではない。
その事実を認識しておく必要があります。
まとめ:私たちが住んでいる世界はSNSでよりスモールワールドになっているのかもしれない
グローバル化が叫ばれるようになり、もう何年も経ちました。
飛行機を使えば1日と少しで地球の裏側まで行けてしまう現在。
今後はSNS、メタバースの到来により、さらに「スモールワールド化」が進むことでしょう。
街で通りかかったあの人も、実は友人の友人の友人なのかもしれません。
ただし、スモールワールド化が進んでいるとはいえ、SNSは友人の質までを向上したわけではありません。
今後はより一層、質を求めるSNS、共感と熱狂をよぶコミュニティー空間の生成が求められそうです。