「友達の数は何人?」
そう聞かれたときに答えられる人数は何人でしょうか。
50人、100人、150人?
この友人数の上限を提示したのがRobin Dunbarという人物です。
本記事では、ダンバー数について詳しく解説します。
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関連記事:「6次の隔たり」とは?「5人を介すと誰とでも繋がれる」理論はSNSでどう変わったのか
ダンバー数とは?
▼ダンバー数とは
ロビン・ダンバー(Robin Dunbar)によって、チームが機能する最大数は150人と提唱した理論。霊長類の脳の大きさ(思考にかかわる脳の部位「大脳新皮質」のサイズ)と、集団の大きさをとの相関を調べ、150という数字が明らかになった。 |
30年前に提唱されたダンバー数。
ダンバーは、著書『How Many Friends Does One Person Need?』の中で、下記のように説明しています。
- 新石器時代のチームの規模は120~150人程度
- 昔のイギリスの村は1集落160人程度
- 狩猟採集社会でも150人程度
- 現代の軍隊の中隊の数は130人〜150人程度
つまりダンバー数とは、あるコミュニティ内の組織レベルの最大値が150ということを示しています。
ただし、ここに質の低い人間関係は含まれていません。
ダンバーのいうところの「空港で会っても気まずくない関係」。
それ以上の関係性のものが「ダンバー数」に含まれます。
ダンバー数とSNSの関係〜ダンバー数150人時代は現代でも有用な仮説か〜
ダンバー数はソーシャルメディアプラットフォームや、オンラインセキュリティのアルゴリズム、ボットを検出するソフトウェアの基礎としても使われている、とダンバーは寄稿した記事の中で説明しています。
2022年10月時点、Google Scholarで「dunbar’s number」と検索すると9,130件の関連記事が出てくることからも、人々のダンバー数への関心が強いことが窺えます。
その一方で、ダンバー数はWorld Wide Web時代に提唱されたものです。
つまり、インターネットが無かった時代に説明された理論です。
ダンバーは、現在でも「ダンバー数は有用である」と説明していますが、実際SNSには万アカと呼ばれる、10,000人以上のフォロワーを抱えているインフルエンサーなどがいるのは周知の事実です。
また、相互フォローといったアカウントもあるため、見方によっては150人というダンバー数を上回っていると感じている方も少なくないでしょう。
そこでここからは、ダンバー数とSNSとの関係性を解説します。
関連記事:ソーシャルネットワークとは?
Twitterの場合
「日本人ツイッタラーの平均的なフォロー数は400人」というデータもあるくらい、Twitterは日本で人気を呈すSNSです。
Facebookなどの匿名性の高い媒体と比べ、多くの人と趣味の共有や意見の交換ができるTwitterは、そのアルゴリズムの性質上、フォロワーが多い人ほどリプライ、コメントなどが寄せられます。
佐賀大学工学系研究科の荒木直人氏らは、Twitterとダンバー数との関係を調べるために実験を行いました。
<実験内容>ストリーミングAPIを使い、日本語が含まれているツイートをランダムに取得。ツイートを投稿したユーザーそれぞれのツイートを最大2,000件取得し、リプライを送ったユーザー数を調べる。(※) なお、本調査での友人の定義は下記の通り <定義>AさんがBさんにコメント後、BさんからAさんにコメントがあった場合には「友達」と定義する。 |
本調査は、インフルエンサーを除外するためにフォロワー数が2,000人以下であること、という条件の他、いくつかの条件を加え実施されました。
結果わかったのは、相互フォロー数が増加していくほど「友達」の数は増加していくものの、ある程度の相互フォロー数を超えると、友達の数はおおよそ230人で頭打ちになるということでした。
ダンバー数は150人程度が平均値とされ、230人が最大値とも言われていますから、今回の調査によって出た230の数値はおおよそダンバー数と等しい値です。
この調査では、Twitterにおいてはダンバー数が適応されることが示されたということです。
※ダンバーは回帰分析を行いましたが、本調査では最小2乗法が使われています。
なお、最小二乗法を用いた調査結果に対してダンバーは懐疑的なコメントを過去に残しています。
参考記事:Why we dispute ‘Dunbar’s number’ – the claim humans can only maintain 150 friendships
参考記事:SNSに現れるダンバー数とその起源-データ分析とモデル化-
Facebookの場合
学術的な調査ではありませんが、WIREDのスタッフ「リック・ラックス氏」はFacebook上で下記のような実験を行いました。
<実験内容>Bryan Adams氏はFacebook上の知り合い2,000人ほどのリストを作成し、全ての「友人」に対し個人的なメッセージを送った(正しくは送ろうとした)。 |
この実験は、ダンバー数によればたった150人しか友人を持てないということに疑問を感じたリック・ラックス氏が実施した、ダンバー数へのアンチテーゼでした。
しかし、最終的に1,000人にメッセージを送り、自身が200人ほどの友人しかいないことを体感して終わる、という逆説的な結果となりました。
リック・ラックス氏によると、実験の途中で返信が「間違いメールだと思うよ」「あなた誰?」などというものもあったとのことです。
すなわち、Facebookでの「友達」の繋がりは、あくまでも数値上のものでしかなく、実際に関係を取り持つ必要のある友人はほとんどいなかったということが、本調査からわかったということでした。
参考記事:「ダンバー数」にFacebookで挑戦
これらの調査結果は、ダンバー数がSNS上においても有効であることを示しています。
ダンバー数を否定する論文や言説も出ている
ダンバー数を肯定する内容の実験がある一方で、ダンバー数を根本から否定するような論文、言説もあることは押さえておく必要があります。
The Conversationに寄せられた「Why we dispute ‘Dunbar’s number’ – the claim humans can only maintain 150 friendships」によると、最新のデータと統計手法を用いた調査結果から考えると、ダンバーの実験結果が正しいとは言えないと説明されています。
その理由は下記2点です。
- 霊長類の生活の他の側面に関する情報など、より多くのデータを統計モデルに追加すると、相関関係が消失する
- 推定値の確実性を示す95%信頼区間は一貫して、人間の集団サイズに対する認知的限界として、一つの推定値を特定するにはあまりにも大きい
つまり、最新の手法を用いた研究結果によると、そもそも脳の大きさと集団の人数以外にも重要な指標(ヒトの認知的要素など)が多いため、この2つだけを切り抜くのは間違っているのではないか、という指摘が入っているということです。
また、最新の統計による計算方法でダンバー数の相関関係を計算し直すと、推定値は289.8と現在のダンバー数よりも大きくなることに加え、信頼度95%区間が226人〜371.6人になるため、推定の幅があまりにも大きくなってしまうことも明らかになりました。
上記の結果をダンバーは計算方法がおかしい(※)と批判していますが、人間の言語処理能力や情報社会への適応力を鑑みると、ダンバー数以上の友人がいてもおかしくないということを示唆したものでした。
※最小二乗法による計算は適切ではないと主張
SNSは孤独を避けるツール足りうるのか
ダンバー氏はダンバー数は下記の4つの階層があると説明しています。
- 第0層:5人程度
- 第1層:15人程度
- 第2層:50人程度
- 第3層:150人程度
上記の第3層がダンバー数です。
0層に近づくほど「親友」のように関係性が近くなり、3層になるほど関係値は低くなります。
つまり、ダンバー数に基づくと、親友と呼ばれるような本当の友達「0層」はたったの5人程度しかいないことが示されています。
ところで、SNSに関する面白い調査結果が出ています。
アンケート結果によると、1日のSNS利用時間が0時間で「孤独を感じる」と答えた人の割合が64%だったのに対し、1~2時間と答えた人は87%。つまりSNSの利用時間が長い人ほど孤独を感じやすいのだ。
PresidentOnlineより引用
SNSは「友人」を増やすツールであると同時に、他社の「生活」が明るみに出てしまうものでもあります。
友人の楽しそうな生活、インフルエンサーの豪華な暮らしが見えてしまうことで、より孤独を感じやすくなってしまう可能性もあるということです。
ダンバー数により友人の上限がおおよそ決まってしまっているとするならば、既に一定の友人がいる場合にはSNSは孤独を避けるツールとしては有用ではありません。
むしろ、孤独を生み出すツールとして機能してしまう。そんな恐れすらあるのです。
まとめ:今後人を動かすのはSNSを超えた「ファンマーケティング」なのかもしれない
今、SNSでは、増えすぎたフォロー・フォロワーを整理し、本当に興味のある話題のみを話せる少人数のグループを作る動きが盛んです。
例えば、Twitterのサークル機能などがまさにそれに該当します。
それでは企業はどのようにマーケティングを進めていけばいいのでしょうか。
解決策としては、ファンマーケティングが挙げられます。
ただSNSで告知をしていくのではなく、熱狂的なファンコミュニティを生成する。
ファン同士がダンバー数の内側に入り込めば、自社製品はそのコミュニティ内で常に話題の商品になり得ます。
機能だけでなく、感情で商品を購入してもらう。
そうした「好き」を活かしたマーケティングがより一層大切になるのかもしれません。