2021年にFacebook社が社名を「Meta」に変更したことで、一気に注目されることとなった「メタバース」。
これまでゲームでの利用が中心だったものの、徐々にビジネスシーンでも活用事例が増加しています。
メタバースを詳しく知り、正しく活用できれば、新たなビジネスや業務の効率化につながるはずです。
本記事では、メタバースの概要や普及に必要な課題、活用事例を紹介します。
メタバースとは「インターネット上の仮想空間」のこと
メタバースとは、Meta(超越)とUniverse(宇宙)を組み合わせた造語であり、インターネット上に構築された3次元の仮想空間のことです。
ただし「メタバース」という言葉の意味はまだ不明確で、実は世界で共通の定義はありません。
日本では以下の4点をメタバースの特徴として説明しています。
- 利用目的に応じた臨場感・再現性があること
- 自己投射性・没入感があること
- インタラクティブ(コンピュータが表示する画像や音声に対して、マウスやキーボードでの入力操作が可能)であること
- 誰でも仮想世界に参加できること
参考:「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会」中間とりまとめ(案)
VRゲームとメタバースの違い
VRゲームとメタバースの違いは、仮想現実内のユーザー数です。
VRとは、Virtual Reality(バーチャル リアリティ)の略で、目や耳を覆う特別なゴーグルによって、仮想空間での出来事をあたかも現実のように疑似体験できる技術のことです。
VRゲームでは基本的に「一人」での体験を想定しており、メタバースは「複数人」で同じ世界を体験することを目的としています。
もちろんVRゲーム内で複数人との協力プレイもありますが、メタバースは「仮想空間に複数人が入り込む」という前提条件があります。
メタバースが注目されている理由は「仮想通貨」や「NFT」などとの親和性の高さ
メタバースでは「ブロックチェーン」を使用した仮想通貨によってアバターのアイテムや絵画など多くのものが商取引されています。
ブロックチェーンとは、インターネット上にある端末同士を接続して、取引記録を分散的に記録する方法の一種です。
これまで、インターネット上のデータは簡単に複製可能であり、権利者情報や固有価値の付加は不可能でした。
しかし、ブロックチェーンによって仮想空間上のアイテムや画像などのデジタルデータにも固有の価値を付加できるようになったことで、正しい取引が行われるようになりました。
近年テレビやネットニュースでも取り上げられることが多くなっているため、今後もメタバースでの商取引は増加していくことが予想されます。
日本におけるメタバースの将来性
現在VR技術の向上によって、一般層にも普及し始めています。
技術自体はありましたが、コンピュータの性能が低いことやVRゴーグルが高価で高重量だったため、一般層にはあまり広がっていませんでした。
しかし、現在ではMeta社のVRゴーグル「Meta Quest 2」に代表されるように高品質なVRゴーグルが以前よりは安価に販売されていることで、一般層にも広く普及し始めました。
メタバースの世界での臨場感や没入感は、VRゴーグルによって引き出されるため、一般層へ普及されれば、さらに広がりを見せることが予想されます。
加えて、総務省の発表では2021年に「4兆2,640億円」だったメタバース市場は、2030年には「78兆円以上」に拡大するといわれています。
これから数多くの企業が市場に参入することで、さらに技術革新が行われていくでしょう。
メタバースの普及に必要な課題
メタバースを現在よりさらに普及させるためには、現段階で考えられる以下2つの課題を解決する必要があります。
- 法律やルールの整備
- VR機器の普及
課題を知った上で、メタバースの将来性を考えていきましょう。
法律やルールの整備
メタバースは新しい概念であり、日本を始め世界でも法制度が追いついていません。
具体例として、フランスの高級アパレルブランド「エルメス」は「バーキン」の商標登録で知られるエルメスのバッグを無断でNFT化し販売したとして、制作したデザイナーを提訴しました。
現実の世界での商標権がメタバース内でも適用されるかが争点となっており、同様の事件が起きないよう、メタバースに適した正しい法整備が急がれています。
法整備やルールづくりは、メタバース普及においてとても重要なポイントです。
参考:仮想空間の法律問題に対する基本的な視点―現実世界との「抵触法」的アプローチ |総務省
VR機器の普及
VR機器は、販売開始した最初期と比較すると手に入りやすくなったとはいえ、未だ多くの商品が高価です。
例えば、Meta社が販売している「Meta Quest 2」は、安価なモデルでも5万円を超えています。
そのため、値段に見合うだけのメリットを感じられず、購入に踏み切れないというユーザーもいるでしょう。
スマホやパソコンの様に、高価でもユーザーが必要と感じるようなメリットを提示できるか、一般ユーザーが手に取りやすい価格設定にできるかが重要です。
メタバースをビジネスに活用した事例
メタバースをビジネスに活用し、成功した以下の3つの事例を紹介します。
- バーチャルオフィス|Meta(元Facebook)社
- バーチャルイベント|Epic Games
- バーチャルショップ|株式会社HIKKY
メタバースはどのようなビジネスに活用できるのか、ぜひ参考にしてください。
バーチャルオフィス|Meta(元Facebook)社
バーチャルオフィスとは、インターネット上に構築された仮想のオフィス空間です。
Meta社(元Facebook)が提供しているバーチャルオフィス「Horizon Workrooms」は、社名から分かる通り、メタバースに力を入れています。
「Horizon Workrooms」では、実世界のキーボードやデスクをスキャンし、メタバース内に反映させたり巨大な仮想ホワイトボードを展開し、書き込んだりできます。
リモートワークによって実際に集まることのない社員同士も、まるで現実世界のオフィスにいるような感覚で作業可能です。
バーチャルイベント|Epic Games
バトルロイヤルゲーム「Fortnite」を提供するEpic Gamesは同ゲーム内でバーチャルイベントを開催しました。
ライブ専用に作られた空間で、米津玄師や星野源など国外でも人気のアーティストがライブを行い、世界中から訪れた多くのプレイヤーに楽曲を披露しました。
メタバース内で一から空間を作成することで、現実世界でかかる物理的な制約から解放され、主催者や出演者の本当に見せたいライブやイベントを実現できます。
世界観を細かく作り込んだイベントを行いたい企業におすすめです。
参考:フォートナイトのサウンドウェーブシリーズで星野源の心に響くショーを視聴しよう
バーチャルショップ|株式会社HIKKY
バーチャルショップは、メタバース上の企業やクリエイターが出店している店舗から現実世界での買い物のような体験ができるメタバースです。
株式会社HIKKYでは、2018年からメタバース上でアパレルやデジタルアーティストなど様々な企業やクリエイターが一同に介したショップイベント「バーチャルマーケット」を開催しています。
バーチャルマーケットでは、アバターやデジタルアートの購入はもちろん、食品やパソコンなど現実世界の商品を購入することも可能です。
現実世界にしか商品がない企業でもメタバースを取り入れることで新たなビジネスチャンスが産まれるでしょう。
メタバースでの失敗事例|セカンドライフ
メタバースの失敗例としてよく挙げられるのが「セカンドライフ」です。
セカンドライフとは、2002年にリンデンラボ社が提供したメタバース空間のことです。
ユーザー同士でコミュニケーションを取れるだけでなく、メタバース内で稼いだ通貨が現実世界へ換金できることで、多くのユーザーや企業が参入しました。
しかし、主に以下の理由から一般社会に普及する事なく、衰退してしまいました。
- インターネット自体の通信速度が遅かった
- プレイするために高スペックのパソコンが必要だった
- 自由度が高いゲームのため目的を見つけられないユーザーが離脱していった
- 当時のインターネットリテラシーが高くなかった
細かな理由は他にもあるかもしれませんが、現在よりもインターネット環境が整っていなかったことが大きな理由と呼べそうです。
まとめ
メタバースでは、アバターを使うことで仮想空間上でも現実世界のような社会生活を送れます。
物理的に離れたユーザー同士が「いつでも」「どこにいても」会えるようになる世界はすぐそこまできています。
ゲームや音楽でのイベントが目立ちますが、現実世界でのみサービスや商品を展開している企業にも大きなチャンスが巡ってくる可能性があります。
チャンスを逃さないよう、メタバース関連の情報収集は常に行なっておきましょう。