2025年に施行予定の情報流通プラットフォーム対処法は、プラットフォーム事業者だけでなく、SNS利用事業者にも影響をおよぼす法律です。
本記事では、情報流通プラットフォーム対処法を解説します。
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情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)とは|ネット上の人権侵害対策に関する法律
情報流通プラットフォーム対処法とは、誹謗中傷などの不適切な情報の対処をするためにプラットフォーム事業者へ措置義務を設けた法律です。
プロバイダ責任制限法の一部改定にともない、情報流通プラットフォーム対処法へと法律名が変更されました。
正式名称は「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」で、情プラ法と略されます。
改定により課された主な措置は、以下の通りです。
- 権利侵害情報に対する対応の迅速化
- 運用状況の可視化
情報流通プラットフォーム対処法では、誹謗中傷や名誉棄損、プライバシー侵害が権利侵害に該当します。
情報流通プラットフォーム対処法は、2024年5月17日の公布日より1年以内に施行される予定です。
情報流通プラットフォーム対処法が制定された背景
情報流通プラットフォーム対処法が制定された背景には、以下の2つがあります。
- SNSなどで人権侵害が深刻化していたため
- プロバイダ責任制限法では迅速な対応が難しいため
SNSなどで人権侵害が深刻化していたため
総務省の調査によると、誹謗中傷や名誉棄損など不適切な情報の相談件数は年々増加傾向となっており、2023年の相談件数は過去最多の6,463件でした。
MRI三菱総合研究所のアンケート調査によると、過去1年間にいずれかのSNSなどのサービスを利用したと答えた回答者のうち6割以上がインターネット上で誹謗中傷を目撃していると回答しています。
一方不適切な投稿をされた際、どこへ削除申請すればよいかわからないと回答した方がアンケート回答者の5割を超えており、相談窓口の認知度が低い点も課題として浮き彫りになりました。
参考:総務省|令和5年度 インターネット上の違法・有害情報対応相談業務等請負業務報告書(概要版)
参考:MRI三菱総合研究所|インターネット上の違法・有害情報に関する流通実態 アンケート調査
関連記事:【2023年11月】企業SNSのリスクマネジメント方法!資格・リスクと対処法を解説
プロバイダ責任制限法では迅速な対応が難しいため
プロバイダ責任制限法の内容は、以下の通りです。
- 損害賠償責任の制限
- 発信者情報を開示請求できる規定の設定
- 発信者情報開示命令事件に関する裁判手続き
プロバイダ責任制限法は、プラットフォーム事業者に対して不適切な情報の削除を義務づける法令ではありません。
プロバイダ事業者が不適切な情報への対応に自主的に取り組んでいたため、早急な対応ができていない点が問題でした。
そのため、情報流通プラットフォーム対処法には不適切な情報に関する早急な対応を義務づける規律が明記されています。
プラットフォーム事業者に課される義務にともなうSNS利用事業者の注意点
情報プラットフォーム対処法では、不適切な情報に対する対応の迅速化がプラットフォーム事業者に義務づけられています。
そのため、SNS利用事業者が注意すべき点は、以下のとおりです。
- 不適切な情報に対する理解
- プラットフォーム事業者に課される義務や罰則内容の把握
- 自社のSNSやコミュニティサイト内における投稿内容のガイドラインを明示
- 万が一の制限対策を踏まえて、複数のプラットフォーム利用を考慮
情報プラットフォーム対処法はプラットフォーム事業者に課された義務ではあるものの、SNS利用事業者にも影響をおよぼします。
改正点を理解したうえで、自社での対策が重要です。
情報流通プラットフォーム対処法の罰則
情報流通プラットフォーム対処法では、新たに罰則規定が加わりました。
プラットフォーム事業が義務を果たさなかった場合の罰則は、以下のとおりです。
違反内容 | 罰則 | 両罰規定 |
総務大臣が行う手続きや窓口の整備是正措置命令に違反した場合 | 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 | 1億円以下の罰金 |
指定事業者としての届け出をしなかったもしくは虚偽の届け出をした場合 | 50万円以下の罰金 | 1億円以下の罰金 |
業務に関する報告をしなかったもしくは虚偽の報告をした場合 | 50万円以下の罰金 | 50万円以下の罰金 |
平均月間アクティブユーザー数や平均月間投稿数の報告に関する虚偽の届け出をした場合 | 30万円以下の罰金 | なし |
違反をした場合、従業員である個人の罰則に加えて、従業員が所属した法人企業に対しても罰則が科される両罰規定の定めがあります。
引用:e-Gov|特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律
SNS利用事業者もSNSの1ユーザーとして、罰則内容を把握しておきましょう。
情報流通プラットフォーム対処法の制定によるSNS利用事業者への影響
情報流通プラットフォーム対処法の施行によるSNS利用事業者への影響は、以下の通りです。
- 適切な運用に向けたガイドラインの策定
- 顧客との接点が減少するリスク
- 利用しているプラットフォームに制限がかかる可能性
- 削除申請の窓口設置
適切な運用に向けたガイドラインの策定
情報流通プラットフォーム対処法の施行にともない、プラットフォーム事業者は不適切な投稿に関する削除指針を策定・公表が義務づけられます。
SNS利用事業者は、SNSの運営や利用に関する行動基準を社内向けにまとめたガイドラインを見直し、理解を深めることが法的トラブルの回避に重要です。
なお、弊社kazeniwaでは、企業SNS運用ガイドラインの重要性についてまとめた資料を提供しています。
法改正とあわせてガイドラインを見直したい方は、資料ページよりお受け取りください。
顧客との接点が減少するリスク
情報流通プラットフォーム対処法の施行にともない、アクティブユーザー数が減る可能性があります。
なぜなら、プラットフォーム事業者側の削除に関する基準の規定により、ユーザーの自由な投稿に制限が発生する可能性があるためです。
アクティブユーザー数が減少することで、企業は接点を設ける機会が減り、新規顧客の獲得やファン化の促進に支障をきたすケースもあるでしょう。
どのような投稿が削除されるのか、プラットフォーム事業者が明確に公表した内容をSNS利用事業者は顧客にアナウンスすることが重要です。
利用しているプラットフォームに制限がかかる可能性
情報流通プラットフォーム対処法の施行により、プラットフォーム事業者がアカウントの発信を厳しく取り締まる可能性が考えられます。
プラットフォームに制限がかかった場合、自社がターゲットとする顧客にアプローチできなくなるといった問題を及ぼすことも。
利用しているプラットフォーム事業者の送信防止措置の基準によっては、運用するSNSを切り替えるなど方針を見直す必要が出てくるでしょう。
削除申請の窓口設置
情報流通プラットフォーム対処法の制定によって、プラットフォーム事業者は以下の対応が必要になります。
- 削除申出窓口の設置
- 手続きの整備
- 窓口や手続きに関する公表義務
プラットフォーム事業者によっては、スピーディーに対応できるようSNS利用事業者に削除申請の窓口設置の要請をする可能性もあります。
その場合、SNS利用事業者が人的リソースの確保といった体制の構築を求められます。
関連記事:SNSガバナンスとは?ガイドラインとの違いや具体的な施策をわかりやすく解説
情報流通プラットフォーム対処法を理解し適切にSNSを運用しよう
情報流通プラットフォーム対処法はプラットフォーム事業者だけでなく、SNS利用事業者にも影響をおよぼす可能性があります。
SNS利用事業者は不適切な情報や課される義務など、改定内容に関する理解を深めることが大切です。
顧客が安心してSNSやコミュニティを利用できるよう、インターネット環境を整える必要があります。
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