パーパス・ドリブンは、世の中の社会問題への意識の高まりから、自社ブランディングに取り入れたい考え方です。
株式会社学情の調査では、アンケートに回答した約6割の就活生が就職活動において「パーパス」や「社会貢献に関する考え方」を意識している、という結果となっています。
しかし、パーパス・ドリブンとは何か知りたい方や、パーパス・ドリブンの効果や重要性が分からないという方もいるでしょう。
本記事では、パーパスドリブンのビジネスでの意味や企業の事例、パーパスドリブンの効果や重要性などを紹介します。
パーパスドリブン(Purpose driven)とは?|ビジネスでの意味
ビジネスにおけるパーパスは、企業や組織の存在理由、存在意義のことです。
ドリブンとは直訳で「〜に駆り立てられる」などの意であり、直訳の意味から転じ「〜を起点にした」「〜を元にした」などの意味合いで使われます。
パーパス・ドリブン(Purpose driven)とは、パーパスを軸として、戦略や目標、社員教育などの企業活動全てのアクションをパーパスに沿って検討し、実践することです。
パーパスは、事業戦略やブランディングの文脈で用いられることが多々あるため、自社ブランディングにお困りの場合はおさえておきたい考え方です。
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パーパスドリブンの効果・重要性
パーパスドリブンな経営や組織がもたらす効果や重要性は以下の通りです。
【重要性】
- 社会における自社の価値観やスタンスを明確にする
- 「なぜそれが求められているのか」を明示し、共感や納得を得る
- 商品価値に直接的なベネフィットと社会的意義を組み込む
【効果】
- 持続可能な開発を実現する
- 経営の意思決定が迅速になる
- イノベーションの創出となる
- 従業員の自律性向上が期待できる
- 組織に一体感が生まれる
- パーパスに共感するファンを獲得できる
パーパスに共感してくれるファン、すなわち従業員や顧客を集めることはパーパスドリブンな経営や組織づくりに必要です。
パーパスドリブンな経営を進めるために必要な3つのステップ
パーパス・ドリブンな経営を進めるために、まずは企業の存在意義(パーパス)を明確にすることが大切です。
パーパスドリブンな経営を進めるために必要な3つのステップは以下の通りです。
- パーパスの設定に必要な調査と分析を行う
- パーパスを言語化する
- パーパスをマクロ・ミクロともに浸透させてゆく
パーパスの設定に必要な調査と分析を行う
パーパスの設定に必要な調査と分析には、ステークホルダーの調査と分析、自社の分析があります。
まずは、以下のような項目のステークホルダーの調査と分析を行います。
- 顧客やエンドユーザー
- CSRやSR
- 仕入れ先やパートナー企業
- ブランドやPR
- IR
- 従業員(正社員、派遣など)
次に、以下のような方法で自社の分析を行います。
- 3C分析:自社、顧客、競合
- SWOT分析:強み弱み、内的外的環境
- コンピテンシー分析:行動特性の共通項
パーパスを言語化する
用意した調査・分析をもとに、パーパスを言語化します。
そうすることで、戦略や目標が「パーパスに沿ったものか」という軸ができます。
軸ができること以外にも、パーパスの言語化には大きなメリットがあります。
- ステークホルダーから信頼を得られる
- 従業員のモチベーションアップが上がる
- 従業員の離職率の低下につながる
- 技術の革新や変化を生み出す可能性がある
パーパスを言語化することは、企業が社会において果たすべき責任や役割が明確となるため重要です。
パーパスをマクロ・ミクロともに浸透させてゆく
パーパスを言語化することで従業員のモチベーションアップにつながると説明しましたが、その理由として「自身の社内における責任や役割が明確になる」ことが挙げられます。
まずは、パーパスを事業計画と照らし合わせて反映させ、事業部や社内の個々人にまで浸透させることが大切です。
そして、顧客やパートナー企業などの直接やりとりする現場にまで浸透させることで、パーパスを社外にも浸透させていきます。
パーパスをマクロ・ミクロともに浸透させるには、コミュニケーションの設計や社内全体の意識改革などが重要です。
社内外でも支持されるパーパスドリブンのポイント
従業員や消費者などのステークホルダーが共感し、支持するパーパス・ドリブンには以下のようなポイントがあります。
- 社会に対する自社の価値観やスタンスに表れているか
- 自社の成り立ちやブランド、サービスや商品と深く関わっているか
- 従業員の納得、共感を得ているか
- 「なぜやるか」が明確となっているか
とくに、社会に対して自社の価値観やスタンスを表明するにあたって、ブランドやサービス、商品と深く関わっているかというポイントが重要です。
顧客に対しては、サービスや商品を購入した後の存在意義(パーパス)までを設定しましょう。
パーパスドリブンなマネジメントを行う企業の事例
パーパス・ドリブンを取り入れて成功するには、パーパスを従業員や消費者などのステークホルダーに共感してもらうことが大切です。
パーパス・ドリブンなマネジメントを行う企業の事例を4つ紹介します。
- 富士通
- キリン
- 花王
- ユニリーバ
富士通
富士通グループのパーパスは「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく」ことです。
富士通がパーパスの実現を図るために、以下の2つの観点から評価しています。
- 経営をビジネスの成長や利益などの財務指標
- 社会・顧客からの信頼や従業員のエンゲージメントなどの非財務指標
富士通の時田CEO/CDXOは「パーパスの実現には、社会に対して長期的で安定した貢献を行い、それが当社自身の成長機会の創出にもつながるサステナビリティな経営が必要」としています。
このように、自社・顧客・従業員・社会という広範囲での視野がパーパスドリブンな経営には求められるのです。
キリン
飲料メーカーであるキリンは、CSVパーパスとして「健康」「コミュニティ」「環境」「酒類メーカーとしての責任」の4つを掲げています。
キリンは2019年にパーパスを策定してから、販売戦略にパーパスを組み込んだパーパス・ブランディングを強化しています。
「健康」「コミュニティ」「環境」の3つのパーパスを訴求する商品は以下の通りです。
パーパスで掲げる「健康」「コミュニティ」「環境」を以下の商品で訴求しています。
パーパス | 商品 | 訴求ポイント |
健康 | イミューズ(機能性表示飲料) | 機能性表示飲料の健康効果 |
コミュニティ | 午後の紅茶 | スリランカ紅茶農園の支援 |
環境 | 生茶 | 再生ペットボトルの使用 |
このように、主力商品を通じてキリンのパーパスをステークホルダーに訴求し、販売拡大で新規顧客の獲得にもつなげています。
花王
日用品を提供する花王のパーパスは「豊かな共生世界の実現」です。
花王の「パーパスドリブンなブランド」の活動は以下で構成されています。
- パーパス(存在意義)の明確化
- 具体的な行動
- コミュニケーション
具体的な行動として、2020年には花王が提案する「Kirei Lifestyle」を体現するブランドである「MyKirei by KAO」をアメリカで、「アスレティア」を日本で発売。
花王はさまざまな社会課題を踏まえたブランド・パーパスによりステークホルダーに価値を提供し、サステナビリティにも貢献しています。
ユニリーバ
ユニリーバのパーパスは「To make sustainable living commonplace(サステナビリティを暮らしの“あたりまえ”に)」です。
ユニリーバは2011年頃にパーパスを策定しており、2021年には「ユニリーバ・コンパス」という事業戦略を発表しています。
「ユニリーバ・コンパス」の特徴は、サステナビリティへの取り組みによって、ユニリーバのパーパスが実現するのかが明確になっていることです。
ステークホルダーに対して、戦略や目標、取るべきアクション、パーパスが明確になっている模範的な事例と言えます。
パーパスドリブンに関してよくある質問
パーパス・ドリブンに関してよくある質問を2つ紹介します。パーパスドリブンについてさらに詳しくなりましょう。
パーパスドリブンには反対の声もあるようですが、意味がないものなのでしょうか?
実際に「パーパスは他社と似通ってもいいのか」「本当に収益が向上するのか」など、疑問や懸念の声もあります。
もちろん、パーパス・ドリブンな経営を進めることや組織をつくることは簡単ではありません。
パーパスを安易に掲げた状況でマネジメントを行ってしまうと、パーパスが形骸化してしまう可能性もあります。
しかし「会社のパーパスが働く理由となっている」と回答した人が回答者の約6割となったアンケート調査があり、パーパスは従業員などのステークホルダーから重要視されているともいえます。
パーパスドリブンな経営をするには、調査・分析を重ねた上でパーパスを策定し、それを実行に移すまでの長期的な視野を持っておきましょう。
パーパスドリブンな組織に求められるリーダーシップとは何でしょうか?
パーパス・ドリブンな組織のリーダーに求められる要素には、以下の4つが考えられます。
- パーパスと矛盾するメンバーや、合致しない行動を取るメンバーに適切な対応ができる
- 長期、短期の視点を両軸で持てる
- パーパスに合わないアイデアに対して「ノー」と言える
- チームメンバー(従業員)と信頼関係を築ける
パーパス・ドリブンな組織のリーダーは、自ら自社のパーパスに基づいた行動をする必要があると言えます。
まとめ:パーパスドリブンは自社ブランディングに必要な考え方
本記事では、パーパスドリブンのビジネスでの意味や事例、パーパスドリブンの効果や重要性などを紹介しました。
パーパスドリブンな経営や組織づくりは、直ぐに収益化・利潤化できるものではありませんが、商品の認知や新規顧客の獲得、自社ブランディングにも必要な考え方です。
弊社では、パーパスの策定にも役に立つ、顧客専用のコミュニティサイトを構築し自社のファンづくりをサポートするサービス「DISCO」をご提供しています。
パーパスに共感してくれる顧客を集めることは、今後ファンマーケティングに取り組んでいきたい方にもピッタリです。