パレートの法則をマーケティングに活用したいと考える方もいるでしょう。
本記事ではパレートの法則の意味とマーケティングに活用するメリット・デメリット、ファン化を強化するコツについて解説します。
パレートの法則とは
パレートの法則とは、あらゆる物事において全体の8割の数値は、残りの2割が生み出しているという考え方のことです。「ばらつきの法則」や「80:20の法則」とも呼ばれます。
イタリアの経済学者、ヴィルフレド・パレートが提唱した法則で、「所得分布の8割にあたる資産を2割の高所得者が所有している」と提唱したことが始まりです。
経済学上の法則ですが、経験則は自然現象や社会現象などにも応用できるとして、現代では経営やマーケティングに活用されています。
働きアリの法則(262の法則)との違い
働きアリの法則は、2012年に長谷川英祐準教授が提唱した法則です。
パレートの法則を発展させた法則ですが、パレートの法則が経験則に基づく成果の割合を示すのに対し、働きアリの法則は仕事量について提唱しています。
働きアリの法則は、アリの集団のうち「よく働くアリが2割、普通に働くアリが6割、あまり働かないアリが2割」に分かれるという考え方です。
アリの数を減らしたり、よく働くアリだけを残したりしても比率は変わりません。
2割・6割・2割の比率であることから262の法則とも呼ばれます。
参考:識学総研
パレートの法則の身近な例
パレートの法則のイメージが湧かない方もいるでしょう。ここでは私生活とビジネスシーンにパレートの法則を当てはめた例をご紹介します。
- 私生活でのパレート法則の例
- ビジネスでのパレート法則の例
私生活でのパレート法則の例
- 収入の8割は、2割の項目に費やしている
- よく身につける洋服の8割は、手持ちの2割の服である
- 本の8割の内容は、2割を読めば理解できる
- 週末の8割を2割の友人と過ごしている
- 1日の8割の時間を2割の場所で過ごしている
ビジネスでのパレート法則の例
- 仕事の成果は勤務時間の2割で出る
- 売上の8割は2割の顧客から作られる
- 会社の売上の8割は2割の社員が生み出す
- Webサイトのアクセス数の8割は、2割のページから生まれる
- 自社システムを使う8割の社員のうち、2割しか機能を使いこなせていない
パレートの法則をマーケティングに活用する2つのメリット
パレートの法則は、マーケティングの効果を高めたり、効率化させたりすることに役立ちます。ここでは、具体的にどのようなメリットがあるのかを解説します。
- 1. 傾注すべきポイントが明確になる
- 2. ファンマーケティングにつながる
1. 傾注すべきポイントが明確になる
パレートの法則を活用することで、成果を生み出す2割にマーケティングを傾注できる点がメリットです。
たとえば売上の向上を狙う場合は、2割の優良顧客に向けたマーケティングを実施するとよいでしょう。もしくは、売上の8割を占める2割の製品のマーケティングに注力することも可能です。
傾注するべきポイントが明確になるため、タスクの優先順位を決めやすいメリットがあります。さらに、選択と集中がしやすいため、限りある資源・コストをどこに集中させるのか、配分を最適化することに役立つでしょう。
2. ファンマーケティングにつながる
パレートの法則は、ファンマーケティングにつながる点もメリットです。購買力がある顧客や意欲が高い2割の顧客に対して、効果的な施策を打ち出すことで、顧客との関係性が深まり、売上向上が見込めるためです。
ターゲットが定まらなければ効果的な施策は打ち出せません。幅広いニーズ応える施策を打つよりも、2割のニーズに集中して施策を打つ方が、より顧客の興味関心や信頼を得られるでしょう。
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パレートの法則をマーケティングに活用する2つのデメリット
パレートの法則は傾注するポイントが明確になり、選択と集中ができる点がメリットですが、集中しすぎることでデメリットも生まれます。ここでは、2つのデメリットについて詳しく解説します。
- 1. 8割の顧客に対する施策を疎かにしやすい
- 2. パレートの法則の割合に囚われてしまいやすい
1. 8割の顧客に対する施策を疎かにしやすい
パレートの法則をマーケティングで活用する場合、8割の顧客に対する施策を疎かにしやすい点がデメリットです。
どこに資源やコストを集中させるのか、効率を考えるうえでパレート法則を参考に、2割の顧客に傾注することはおすすめです。しかし、8割の顧客を蔑ろにしてよいわけではありません。顧客は常に増え続け、変わり続けます。8割の中にも将来2割になり得る顧客が存在するでしょう。
つまり、顧客との関係性を持続させ、接点を拡大するためには、8割を含めた顧客全体に対する施策も重要なのです。
2. パレートの法則の割合に囚われてしまいやすい
パレート法則は8割・2割が原則ですが、数値に囚われやすい点がデメリットです。割合はあくまで仮説であり、どの事象にも当てはまるわけではありません。企業の努力次第で重要な要素が2割以上になる可能性もあります。
そのため原則の数値は参考程度に留め、自社のさまざまなデータをもとに割合を導き出しましょう。
パレートの法則でファンマーケティングに成功した事例
パレートの法則をマーケティングに活用したい場合、他社の成功事例が気になるでしょう。ここでは以下2つの事例について解説します。
- トマトジュース|カゴメ株式会社
- レタスクラブ|株式会社KADOKAWA
トマトジュース|カゴメ株式会社
トマトジュースが主力商品であるカゴメ株式会社の成功事例です。トマトジュースの売上が落ち込み始めた際に売上情報を分析したところ、優良顧客の2.5%が売上全体の30%〜40%を占めていることがわかったのです。
そして、売上の落ち込みは優良顧客が離れていることが原因だと判明しました。そこで顧客との関係性を再構築するために、オンラインコミュニティサイト「&KAGOME」を立ち上げたのです。
イベント開催やレシピ公開・共有など、顧客とカゴメの社員が交流できるコミュニティを設立し、顧客の囲い込みを実施したのです。その結果、トマトジュースの売上を立て直し、伸ばすことにも成功しました。
レタスクラブ|株式会社KADOKAWA
株式会社KADOKAWAが出版する料理雑誌「レタスクラブ」のV字回復に、パレートの法則が活用された事例です。
販売部数が低迷したレタスクラブをV字回復させるために、ファンを作ることから始めました。それは、社員をファンにすることです。具体的には会議のやり方を改革し、積極的な意見交換やアイデア出しをして、社員がレタスクラブに高い関心を持つようにしたのです。
さらに読者の自宅を訪問し、生活感を体感して、レタスクラブにはどのような内容が求められているのか、ニーズを調査し雑誌に反映させました。
このように、レタスクラブではパレート法則でいう2割のファン化を、社員に促すことから始めました。そして既存顧客のニーズ調査を徹底したことでファンから口コミが広がり、販売部数を伸ばしたのです。
パレートの法則でファンマーケティングを強化する4つのコツ
パレートの法則で、売上の8割は2割の顧客から作られると想定できるように、コアなファンを作ることが売上全体の向上につながります。
そのためファンマーケティングを強化したいと考える企業も多いでしょう。ここではファンを増やし、ファンとの関係性を深めるコツについて解説します。
- 1. 社員をファンにする
- 2. ファンのニーズに合わせた価値提供をする
- 3. ブランディングを確立させる
- 4. ファンとのコミュニケーションを取る
1. 社員をファンにする
前述のレタスクラブの成功事例があるように、ファンマーケティングを強化するためには、社員が自社製品・サービスのファンになることが重要です。
社員が自ら消費者となり、自社商品に自信を持てれば、商品の魅力を的確に顧客に伝えられます。さらに利用者である社員の感想は信頼度が高いため、顧客は安心して商品を購入できるでしょう。
社員とコミュニケーションできる距離が近ければ、企業がより身近に感じられ、応援する顧客も増えます。このように社員をファン化することで、社員と顧客のコミュニケーションが活性化し、顧客のファン化も期待できるのです。
2. ファンのニーズに合わせた価値提供をする
パレートの法則でファンマーケティングを強化するためには、ファンのニーズに合わせた価値提供をすることがポイントです。パレート法則の2割に該当する顧客が、どのような価値提供を望んでいるのかを調査しましょう。
レタスクラブでは顧客の自宅を訪問しましたが、購入履歴や問い合わせ内容、クレーム件数などを分析することもおすすめです。
どの施策が効果的か、実施後に検証してファンのニーズをさらに理解、顧客満足度を高めることでファン化が期待できます。
3. ブランディングを確立させる
パレートの法則でファンマーケティングを強化するためには、自社のブランディングが欠かせません。数ある同業他社から自社を選んでもらうためには欠かせないのです。
具体的には、独自性のある商品・サービスを作ったり、ブランドコンセプトを明確に設定したりする必要があります。
ブランディングを確立させるためには、すでに支持を集めている商品・サービスの特徴から、自社の強みや顧客から求められていることを探しましょう。そして、顧客が共感できるストーリー性を持たせて発信することが重要です。
関連記事:【わかりやすく】ブランディングとは?TwitterなどSNSに使えるブランディングの方法や使い方の基礎を徹底解説!
4. ファンとのコミュニケーションを取る
顧客にファン化を促すには、企業と顧客でコミュニケーションを取ることが重要です。なぜならコミュニケーションを取ることでニーズを把握したり、接点を継続・拡大したりして顧客の購買意欲を高められるためです。
パレート法則でいう2割の優良顧客に対しては、ニーズを把握して顧客満足度を高めることに役立つでしょう。一方で8割に該当する顧客に対しては、メルマガやSNSなどを活用して常に接点を持ち、自社への興味関心を育てられます。
近年では、コミュニティサイトを運営する企業も増えています。独自のコンテンツが発信でき、自社に興味がある顧客だけを集められるため、ファン化を促しやすい点がメリットです。
関連記事:ファンコミュニティとは?導入するメリットと成功事例をご紹介
まとめ
パレートの法則とは、あらゆる物事において全体の8割の数値は、残りの2割が生み出しているという考え方のことです。企業のマーケティングでパレート法則を活用することで、傾注すべき要素にコストや労力を集中させられます。
さらに、2割と8割の顧客に対するマーケティングも最適化できるため、ファンマーケティングに役立つ点がメリットです。
ブランディングの確立やニーズの把握で2割の顧客からファン化を促し、コミュニティサイトを活用して全体の顧客との関係性を深め、更なるファン化を目指しましょう。