「顧客起点」という言葉を聞いたことがあっても、意味やマーケティングでの活用方法がわからない方もいるでしょう。
本記事では、顧客起点の概要と顧客起点マーケティングを実施するメリットや実施方法、うまくいかない理由や解決策について解説します。
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顧客起点とは
顧客起点とは、顧客の声や行動・心理を分析し、顧客のニーズを中心に事業を展開することを指します。
従前の企業起点との違いは下記の通りです。
企業起点(従来のお客様視点なども含む) | 顧客起点 | |
競合設定 | 競合設定が「企業側からみた都合の良い競合」になっている。 | 競合設定が顧客が選べる「解決策」を見据えた設定になっている。 |
顧客の定義 | 企業が想像した自社製品を利用する理想の人物像 | 実際に自社商品・サービスを利用する顧客 |
業務プロセス | 企業が調査した需要から商品・サービスを生み出し、製造や広告、営業などの段階を踏んで顧客に提供する。 | ひとりの顧客に焦点を当てて行動や心理を分析し、業務プロセス全体に顧客のニーズを反映させる。 |
顧客起点では、顧客がどのような心理と行動を経て購入に至るのかを徹底的に調査し、その結果を参考に経営や商品開発、マーケティングに活かします。
この理論は実業家の西口一希氏が著書『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』の中で提唱しました。
顧客起点のマーケティングを実施する2つのメリット
顧客起点のマーケティングを実施することで下記2つのメリットがあります。
- 顧客のニーズを掴んだ商品開発ができる
- 顧客ロイヤルティが高まる
顧客のニーズを掴んだ商品開発ができる
顧客起点マーケティングを実施することで、顧客のニーズを掴んだ商品開発に繋がります。
なぜなら、ひとりの顧客の悩みを徹底的に調査し、マーケティングに反映させるためです。(『実践 顧客起点マーケティング』ではこの考え方をN1分析として取り扱っています。)
従来は、大衆に受け入れられる商品の提供が主流でした。
企業が価値を作り出し、他社とさほど差別化をしなくても商品が売れた時代です。
しかし現代では、数ある商品の中から悩みに寄り添った商品を顧客が自ら選び、価値を見出します。
そのため、顧客起点マーケティングを実施することで、個人の悩みに寄り添った商品を開発し、狙いを定めてマーケティングをすることが可能です。
顧客ロイヤルティが高まる
顧客ロイヤルティが高い状態とは、企業やブランドに対して愛着や信頼がある状態をいいます。
顧客ロイヤルティを高めるためには、顧客のニーズに応えた商品を揃えたり、改善し続けたりすることが必要です。
顧客起点マーケティングは、顧客分析から嗜好や行動動機の変化に気が付きやすく、顧客のニーズに応え続けられるメリットがあります。
関連記事:ロイヤルカスタマー戦略とは?重要性や具体事例、ロイヤルカスタマー戦略を始めるための4stepを解説
顧客起点がうまくいかない3つの理由と解決策
顧客起点をすでに実施していても、うまく機能せず悩んでいる企業もあるでしょう。
ここでは考えられる3つの理由と、それぞれの解決方法を解説します。
現状のマーケティングで該当する部分がないか、確認してみてください。
- ナレッジマネジメントが浸透していない:【解決策】部門間の連携を強化する
- 顧客情報が不足しているから:【解決策】顧客情報の収集とセグメンテーションを強化する
- カスタマーサクセス中心に事業展開をしていないから:【解決策】カスタマーサクセス中心の事業展開に切り替える
1. ナレッジマネジメントが浸透していない
顧客起点のマーケティングが機能していない原因として、ナレッジマネジメントが社内で浸透していないことが考えられます。
ナレッジマネジメントとは、個人の知識やノウハウを組織で共有することです。
ナレッジマネジメントが浸透していない企業では、顧客の意見がマーケティングや現場に、活用されていない可能性があります。
たとえば、営業が顧客に提案する際には、利用するイメージができる事例や生の声が必要不可欠です。
しかし、ナレッジマネジメントが浸透していなければ有益な事例を伝えることは困難でしょう。
解決策:部門間の連携を強化する
ナレッジマネジメントが浸透していない問題を解決するためには、部門間の連携を強化することが重要です。
部門間の連携を強化し、経営・企画・営業・カスタマーサクセスなどの部門で、同一の認識を持って事業を推進しましょう。
とくに、カスタマーサクセス部門を中心としてナレッジ共有することがポイントです。
なぜカスタマーサクセスを中心に連携を強化するのかは、後述で解説します。
2. 顧客情報が不足しているから
顧客起点マーケティングがうまくいかないもう1つの理由は、顧客情報が不足していることが考えられます。
顧客起点マーケティングは、顧客の声や行動動機を分析し、マーケティングに反映させる手法だと解説しました。
つまり顧客から得られる情報が少なければ、顧客理解が深まりません。
顧客分析をしているつもりでも、不十分の可能性があるでしょう。
解決策:顧客情報の収集とセグメンテーションを強化する
顧客情報が不足している問題を解決するためには、顧客情報を収集しセグメンテーションを強化することが重要です。
顧客情報を収集する方法の1つは、直接顧客にヒアリングする方法です。
顧客接点を持つ担当者は顧客に価値提供するとともに、顧客の満足度や新たなニーズなどの情報を集めることを意識して接客しましょう。
近年では、インターネットやSNSを活用して顧客の声を集めている企業も多い傾向にあります。
さらに顧客を細かくセグメントし、それぞれの特徴やニーズの違いを細かく理解することが重要です。
セグメンテーションの方法は後述で解説します。
3. カスタマーサクセス中心に事業展開をしていないから
3つ目の原因は、カスタマーサクセスを中心に事業展開していないことがあげられます。
カスタマーサクセスは顧客満足度を高め、また利用したいと思わせる重要な役割を持つ部門です。
さらに、顧客の情報を最も得られる部門でもあります。
しかし、顧客の情報が各部門に共有されなければ、顧客の意向とは異なる内容で事業展開をしている可能性があり、顧客起点マーケティングが機能していない原因となっているかもしれません。
解決策:カスタマーサクセス中心の事業展開に切り替える
カスタマーサクセス中心の事情展開に切り替えるためには、カスタマーサクセスの役割を明確にし、他の部門との関わり方や仕組みを再構築しましょう。
そのためには、サクセスシナリオを作成することがおすすめです。
サクセスシナリオとは、カスタマーサクセスまでの道筋のことです。
カスタマーサクセスまでは、マーケティング部門が企画を考え、プロモーションや営業活動を経て顧客が利用し、成功体験へとつながります。
そのため、各フェーズの役割と連携方法を明確にしましょう。
顧客起点マーケティングを実施する4ステップ
顧客起点のマーケティングを実施する際は下記4つのステップで進めましょう。
- Step1:自社の課題を明確にする
- Step2:N1分析を使って顧客分析をする
- Step3:バリュープロポジションマップを作成する
- Step4:カスタマージャーニーマップを作成する
Step1:自社の課題を明確にする
顧客起点マーケティングを実施するにあたって、まずは自社の課題を明確にしましょう。
たとえば、「商品のリピート率が低い」「広告がターゲットに届いていない」「社内の連携ができていない」などがあげられます。
顧客起点マーケティングは、顧客の意見や行動動機を参考にしますが、すべてを反映させるわけではありません。
自社のブランディングや商品の強みは活かしつつ、顧客の要望を反映させた事業展開をすることがポイントです。
Step2:N1分析を使って顧客分析をする
N1分析とは、1人の顧客に焦点を当て、その顧客の購買行動や心理を分析したり、インタビューをしたりして顧客理解を深めることをいいます。
5セグマップや9セグマップを活用して顧客をセグメントしましょう。
5セグマップとは、顧客を階層分けすることです。
各セグメントから1人ずつ選び、調査しましょう。
選んだ顧客へのインタビューでは、たとえば以下のような質問をすることがおすすめです。
- 商品を知ったきっかけ
- 購買した理由
- 購入した場合、どのようなシーンで利用するか
- 購買した場合、商品に満足した点
- 購買した場合、不満に感じた点
- 他の人に勧める場合、どのような人に勧めたいか
9セグマップは、5つのセグメントに分けた顧客に対して、ブランド選好の要素を追加したセグメント方法です。
ブランド選好とは、次もそのブランドの商品を買いたいと思うか、否かを表します。
買いたいと思う場合は「積極」、思わない場合は「消極」で表し、ブランドや商品の課題が導き出せます。
Step3:バリュープロポジションマップを作成する
バリュープロポジションアップとは、企業が顧客に提供できる価値を表した図のことです。
バリュープロポジションマップを作成することで、自社が提供する商品の強みや顧客のニーズとのギャップが理解できます。
バリュープロポジションには、3C分析を活用することがおすすめです。
「競合が提供している価値」「自社が提供できる価値」「顧客のニーズ」の3点を洗い出しましょう。
顧客が求めていて、尚かつ自社が提供でき、競合が提供できないものを見つけ出してください。
顧客のニーズは、推測するのではなく、インタビューやアンケートなどを通して生の声を集めましょう。
Step4:カスタマージャーニーマップを作成する
カスタマージャーニーマップとは、顧客が商品を認知し、購入・利用する一連の流れを図解したものです。
顧客の心理を理解するために用いられます。
商品を認知する段階から、購入・体験までの心理や行動動機を可視化することで、フェーズごとの施策を検討する際に役立ちます。
表を作成し、横軸には認知・興味関心・比較検討・購入までのフェーズを設定しましょう。
縦軸には、タッチポイントや顧客の行動、心理(感情)を設定し、表を埋めてください。
そして、縦軸に自社が抱える各フェーズの課題や解決するための施策を追記し、改善に努めてください。
まとめ
顧客起点とは、顧客の声や行動・心理を分析し、顧客のニーズを中心に事業を展開することです。
顧客起点マーケティングを実施するためには、顧客の解像度を高めることがポイントです。
本記事で解説した手法とうまく機能しない理由を参考に、顧客起点マーケティングを実施してみてください。